小学校付き添い編⑥「メインイベント」

普段の学校生活でのメインイベントと言えば、給食の時間ではないだろうか。

ステイスクール中の給食の時間は、親も息子の教室でクラスメートと一緒に食べていた。

初めの頃クラスメートは息子の胃ろうでの食事について興味津々だった様だ。「口から食べないんならどうやって食べるの?」「このチューブでお腹に入るの?」と質問ぜめだったが、幼稚園から一緒のクラスメートは「これで食べるんよね」といった感じだったらしい。

中には「ひいお婆ちゃんと同じだ」というクラスメートがいて、子どもの観察力・理解力を侮ってはならないと自戒した。

 

1年生当時の息子は、いつもバナナフレーバー味を食べていて、そのバナナの香りをクラスメートが得も言われぬ顔でかいでいたのは楽しい思い出だ。それから数年後、毎日バナナ味の息子の給食にクラスメートは不満そうに「同じ味ばっかりで良いと思っとるん、バナナと違う味も絶対食べたいと思っとるはず!」と至極真っ当な指摘があった。これを機に問い合わせてみると、フレーバーの香りはバナナを筆頭にミルク、コーン、抹茶、コーヒーがあることがわかった。この件に関して両親ともに「いつも当事者の立場に立って」などと言っているが、まだまだできていないこともあると反省し、指摘してくれた息子のクラスメートに感謝した。そしてこんなあたりまえのかかわりの中で様々な気づきを与えてくれるふつう学級に通わせて良かったと改めて実感した。新味の香りはクラスメートにも好評で、どうやら息子は抹茶味が好みらしい。

 

ここまで給食についてサラッとつぶやいているが、経管栄養の注入についても地域によってさまざまな制約がある。別室で食べるよう強要されたり、注入のためだけに保護者が学校に付き添ったり、駆り出されたりするケースがある。息子は総合的な判断で経管栄養剤を食べているが、みんなと同じ給食をミキサーにかけ提供されている子ももちろんいる。1年前に出た『バクバクっ子、街を行く!』本の種出版https://www.bakubaku.org/%E5%87%BA%E7%89%88%E7%89%A9/%E5%8F%82%E8%80%83%E5%9B%B3%E6%9B%B8/にも書かれているが、医療的ケアが必要ということで受ける、合理的配慮の不提供や、差別的な取り扱いはまだまだ多くあるのが現状だ。この状況を変えていくためには一人でも多くの人にバクバクっ子たちのことを、医療的ケアとは何なのかを知ってもらうしかない。私はそう思ってつぶやいている。

 

今はコロナ禍で給食の時間もさまざまな制約を受けている。子どもたち誰もが望むかたちで給食の時間を楽しんでほしいと切に願う。