会の概要

人工呼吸器をつけた子の親の会(バクバクの会)は、1989年5月、長期に渡り人工呼吸器をつけている子どもたちの、安全で快適な入院生活と生きる喜びを願い、淀川キリスト教病院の院内家族の会として発足しました。翌年、人工呼吸器をつけていてもどんな障害があっても、ひとりの人間ひとりの子どもとして社会の中で当たり前に生きるためのより良い環境づくりをめざし、全国にネットワークを拡げ、全国組織として始動しました。わたしたちは、「子どもたちの命と思い」を何よりも大切にしながら様々な活動に取り組んできました。しかし、会の活動も27年を迎え、発足当時は小さかった子どもたちもすでに大人になり、「本人たちの命と思い」をより大切にした活動を当事者とともに進めていくために、2015年定期総会にて、会の名称を「バクバクの会~人工呼吸器とともに生きる」に変更いたしました。

 

2017年1月現在、全国に約500名の会員がおり、力を合わせて活動しています。


会長あいさつ

共生する社会に!

 

本年4月1日、『障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律』(障害者差別解消法)が施行されました。この法律は、「障害のある人もない人も、互いに、その人らしさを認め合いながら、共に生きる社会をつくること」を目指して作られたものです。

 

しかし、7月26日未明、「障害者なんていなくなればいい」「障害者は不幸を作ることしかできません」といった思想のもと、相模原市の障害者施設で19人が死亡、27人が負傷する殺傷事件が起きました。事件の容疑者はこの施設の元職員でした。この容疑者がなぜこのような思想に至ったのかは定かではありませんが、経済至上主義の中で、社会の多くの人々の心の隅に「障害者はいなくなればいい」との思いがあるのではないのでしょうか。 障害者が本当にいなくなったらどんな社会になるのでしょうか?次は体の動かなくなったお年寄り? 事故や病気で体が不自由になった人たち? 今、自分は健全・健常と思っている人も、いつ不自由な体になってもおかしくはないのです。

 

この国の政府は、「再発防止策や、施設の安全確保の強化」を唱えるのみで、事件の背景にある障害者に対する差別意識を根本的に解消するための社会的な対策や、障害者差別解消法の理念である共生する社会についての言及は全くありません。

 

バクバクの会は、人工呼吸器をつけた子どもたちの「いのちと思い」を何よりも大切に、どんな障害があっても、“ひとりの人間、ひとりの子ども”として、あたりまえに生きられる社会の実現をめざして活動を続けています。

 

また、会発足10周年(2000年)には、人工呼吸器をつけていても地域社会で普通に暮らし、旅行などを楽しむ当事者の姿を通して、ともに生きる社会をめざすために、「呼吸器をつけておもてへ出よう!」というビデオを作成し共生社会への啓発活動を続けてきました。

 

本年の定期総会・講演会では、新たに作成した啓発用のDVD「風よ吹け!未来はここに!!」(人工呼吸器をつけて地域で生きる~ともに生きる力を育もう~)の発表上映会を行いました。このDVDは、保育・教育現場での親の付き添い問題や、様々な支援を受けながらの地域生活や自立生活する事例を紹介することで、当事者や親が将来に目標を持って生活できるようになること、呼吸器を使用していても共生していくための、地域支援の充実の必要性、支援を躊躇している人の一歩を踏み出すための手助けなどを目的としています。

 

2006年に施行された障害者自立支援法では地域生活支援を明確にうたい、生活の場を「施設から地域へ」移行することを推進しています。これからも地域で生活していく人工呼吸器使用者は増加していくでしょう。家や施設に閉じこもっていたのではその存在を認められません。機会があるごとに社会に出て一生懸命に生きる姿をアピールしましょう。共生する社会の実現のために!

 

文末になりましたが、当会の定期総会・講演会へのご後援、協賛、助成をいただいた多くの団体の皆様、保育や受付など、運営のため裏方として働いていただいた支援者の皆様、大変ありがとうございました。お礼申し上げます。

 

2016/10/17 バクバク117号 巻頭言より

 


【バクバクの会のあゆみに関わる資料】

◆立命館大学グローバルCOEプログラム「生存学」創成拠点ホームページ

 

◆小児在宅人工呼吸療法の開始と普及において果たした親の役割について

「人工呼吸器をつけた子の親の会〈バクバクの会〉」の活動の視点から―

The Role of Parents in Starting and Spreading the Use of Home Mechanical Ventilation by Children in Japan:

From the Activity of Bakubaku-no-kai, the Association of Parents with Children Using Artificial Ventilators

 

八木慎一 YAGI Shin’ici

(立命館大学大学院先端総合学術研究科 2009年度入学 公共領域)

 

全文→こちら 

(立命館大学大学院先端総合学術研究科『Core Ethics』Vol.8 2012年 所収)

 

要旨:

 90 年代以降,入院している人工呼吸器をつけた子どもが在宅人工呼吸療法(HMV)に移行するケースが増えている。しかし,HMV の開始と普及において子どもの親が果たした役割に関しては明らかでない。本論文では「人工呼吸器をつけた子の親の会〈バクバクの会〉」の会報と関係者へのインタビューを利用し,以下三つのことを明らかにした。第一に,HMV は83 年に国内初の事例をみるが,80 年代にその存在は呼吸器をつけた子どもの親に知られていなかった。第二に,子どもが短期間外出・外泊することに関しては,医師や看護師の役割も大きかったが,HMVに関しては親たちが主体的に選択していた。第三に,90 年以降にHMV を全国の親に認知させ,普及させていく役割を果たしたのは,〈バクバクの会〉のメディアを利用した活動の成果が大きかった。小児HMV の歴史には,呼吸器の開発といった要因に加えて,子どもの親の意思を位置づける必要がある。

 

Abstract:

In Japan, the number of children using home mechanical ventilation (HMV) has been rapidly growing from the 1990s to the present. However, the role of parents in the spread of HMV has not been researched. This paper focuses on Bakubaku-no-kai, the Association of Parents with Children Using Artificial Ventilators; the research is based on interviews and a review of group's newsletters. The research clarifies the following. First, although HMV had been introduced to Japan in 1983, most parents with children in need of an artificial ventilator were unaware of HMV until the activities of Bakubaku-no-kai from around 1990. Second, although doctors and nurses had made opportunities for letting the children go out from hospitals for short periods, it was parents who pushed for the use of HMV, because HMV enabled their children to go home permanently. Third, Bakubaku-no-kai’s activities attracted media and social attention to HMV’s potential for children, and this inspired other parents who were in similar circumstances in Japan. Therefore, in the history of HMV for children, in addition to the invention of the artificial ventilator, the will of parents in Bakubaku-no-kai must be recognized.

 

キーワード:在宅人工呼吸療法、親の会、人工呼吸器をつけた子の親の会〈バクバクの会〉、超重症児

 

Keywords:

home mechanical ventilation (HMV), parent's group, Bakubaku-no-kai, Association of Parents with Children Using Artificial Ventilators, profound and multiple disabilities